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13.ハナ、アルバイトを手にする P.78~84 [天国の郵便配達人]

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*ページ数が飛んでるのは本に写真がはいってるからです

真っ赤な舌を差し出してあえいでいるような空は、だんだん低く沈んでいった。
暗くなる時分、郵便ポストの中の手紙をカバンに移していたのを止めて、
遠くに少しばかり黒い何かを見た。それがだんだんと近づいてきて完全に姿を現した。
ハナだった。ジェジュンは見えるか見えないかぐらいの微笑を浮かべたが、
何も見えない振りを続けた。

「元...気?」
ジェジュンのすぐ横までたどり着いたハナは少し不自然な挨拶をした。
「何だよ、また食えない手紙持ってきたのか?」
ハナを見もせずにジェジュンはぶっきらぼうに話しかけた。
「ううん」
ジェジュンはようやくハナをまともに見た。
「なら、俺と仕事することに決めたんだな」
「まさか」
「なら何で来たんだよ?」
「私が書いた手紙を返してもらおうと思って」
「もう遅いさ」
「え?」
「すでに天国に送ったから」
「あんた、またそんなおかしなことを…」
ハナは全部言葉を言い終えることができなかった。ポストの中に手を突っ込むなり
ジェジュンが驚きの声をあげたからだ。
「あれ、それは何?」
ジェジュンが綺麗に包装された小さい包みをポストの中から取り出すとハナは首を傾げ訊いた。
ジェジュンは何も言わず包みをほどいた。するとすぐお弁当箱が顔を出した。
蓋を開けてみたジェジュンは言葉もなくその中に入っているものを見つめた。
「卵焼きだ。しかもチーズ入り卵焼きだ」
小さいお弁当箱には詰められるだけ詰められていて幾重にも重なりあっていたため
上の部分にある卵焼きは平たく押しつぶされていた。
「子供が5歳だって…」
ジェジュンがつぶやいた。
「え?」
「その子のお母さんはポストの入り口の大きさを手で測っていったんだな。その子が
一番好きな食べ物だって。もっとたくさん食べさせて上げられなくてごめんって
手紙に書いてあった」
ジェジュンは話すのを止めた後、卵焼きをつまんで口に入れもぐもぐと食べた。
「何するのよ!」
驚いたハナがお弁当を奪い取った。
「その子に届けようとしたものじゃない!」
「すぐ腐るだろ、もったいないじゃないか」
「だけどその子のものじゃない!」
ハナの言葉をよそにジェジュンは卵焼きを手渡した。彼女はそれをしばし見つめたが
それからサッと受け取った。二人は卵焼きを食べる間何も話さなかった。いつの間にか
少し暗くなった空が彼らの肩の上まで降りてくると、二人は立体感のある影のように
並んで座り空になったお弁当箱だけを見つめていた。

しばらくして立ちあがったジェジュンはカバンの中の携帯用ライトを取り出して
草むらを隅々照らした。そうこうするうち片方の膝をついてライトを固定した。
見守っているだけだったハナがその横に行くと、ジェジュンが振り返った。
「これが何だかわかるか?」
ジェジュンの手には黄色の花があった。ハナはそれを注意深く見つめて
“猫ご飯(日本ではカタバミという道端に生える多年草)じゃない?”と言った。
「猫ご飯?」
「よく知らないけどそうだと思う。野花を一枚描いた時、それも一度描いてみたことがあるの」
「どうしてそういう名前なんだ?」
「猫が消化が悪い時に食べる草だからだって」
「消化が悪い時?じゃぁダメだな…」
首を傾げながらジェジュンは困り果てた。そういうときのジェジュンは必ず12歳にも満たない
少年のような表情をしていて、世間の垢みたいなものがついてないように純粋そうに見えた。
ジェジュンはしばらく迷っていたが、お弁当箱の上に“猫ご飯”の花を置いた。
「何してるの?」
「子供がちゃんと食べました、ごちそうさまっていう返事さ」
「嘘つき!」
「俺がその子だったらお母さんに花をあげたいと思ったはずさ。だから嘘だけど嘘じゃない」
ジェジュンはきっぱりと言うとお弁当をポストの横に置いた。
そうするうちに空はすでに漆黒のように黒くなり、近くに居ても互いに顔が見えないくらいになった。
「もう少し明るくしてくれ」
空に向かってジェジュンがつぶやいた。すると誰かが空いっぱいの星を輝かせた。
ぎっしりと空間を占める星たちは信じられないほど明るくきれいだった。お互いの顔が
見え始めとジェジュンが笑った。
「本当に天使かもしれないだろ?」
一瞬そう思いながらハナは“ここは違う世界みたい”とつぶやいた。
世界にぽとりと落ちてきた違う空間。
そう言ってみると本当に自分自身が違う空間の中を遊泳してる感じまでした。
「仕事、やるだろ?」
ジェジュンがささやいた。
「一つだけきいてもいい?」
ハナも声を低くして言った。
「何?」
「本当に1時間2万ウォンでしょうね?」
「あぁ運転手(キサ)がそれだけくれるって言ったから」
「キサ?人の名前?」
「いや、運転手のことさ。バスを運転してるからただそう呼んでるのさ」
「バスの運転手?もしかして私がここに来るために乗ったあのバス?
こう…髪が長い男の人の…」
「あぁそうさ。彼が俺たちの雇用主だ」
「そうなの?あなたが雇用主じゃなくて?」
ハナが驚いてきくとジェジュンは頷いた。
「ふーん、あなたが雇用主じゃないってことね?」
ハナは意味深長に笑いながら繰り返した。
「ならあなたと私は対等じゃない」
「何でだよ?俺は正式に採用になったけどおまえは人手が足りない時手伝う程度なのに」
「それでもあなたの顔色を窺わなくていいってことよね」
「いつ顔色を窺うのさ」
「まぁそういうこともあるかもしれないってこと。いいわ、1時間2万ウォン、あなたが
責任もって確実に頂戴ね」
ハナはそうするとジェジュンに手を差し出し握手を求めた。
「契約成立!二言はないな?」
ジェジュンはハナが差し出した手を握りながら言った。
「わかった、二言はないわ。とにかくよろしく」
ハナは涼しそうに答えた。二人は握手をした手を下から上に勢いよく揺さぶることで
約束の証にした。そして再びお互い見つめながら笑った。ふと思い出したように訊いた。
「ところであなたの名前は何?あなたは私の名前をしってるのに私は知らなかったじゃない」
ジェジュンは少しもったいぶった後、ハナの目をまっすぐ見つめながら言った。
「ジェジュンって呼んでくれ。運転手もそう呼んでるから」
「それどういうこと?運転手もそう呼んでるからって…」
「さぁな。それがどういうことかって?」
ジェジュンは苦々しく笑って額にかかった髪を細くて長い指でさっとはらった。
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